連日の猛暑の中でも、街中では小学生から高校生まで、夏休み中の元気な子どもたちの姿が目に入ります。
 昨年に引き続き、旅行や遠出は難しいムードですが、家でのんびりと過ごせる日々にはやはりワクワク。一方で小中高生のみなさんは、学校から出された宿題に頭を悩ませているのではないでしょうか。
 中でも読書感想文は時間のかかる課題で、どう書けばいいのかわからない、どんな本を読めばいいのかわからない、そもそも本を読むのが面倒くさい…と、なかなか手をつけられない人も多いのではないでしょうか。
 結局、夏休み最終日まで手をつけず「早くやっとけば良かった」と後悔し、お母さんからは「去年も感想文が残っていたでしょ。早くやってしまったらと言っていたのに」と小言を言われ、家の中の空気が悪くなってしまうことも。そんな嫌な思いをしないために、感想文を書くためのポイントや本の選び方を紹介します。(Sデジ編集部・宍道香穂)
〇どんな本を読めばいい? 図書館で聞いてみた
 読書感想文用の本はどのように選べばいいのか、島根県立図書館(松江市内中原町)へ行き、図書館支援課子ども読書支援係長の坪内珠美さんに聞いてみました。
 坪内さん「図書館では、課題図書を紹介するコーナーのほか、スタッフが選んだおすすめの本を並べたコーナーを作っています。毎年7月におすすめの本のリストを作っており、それに基づいて並べています」。本と言えばやはり図書館。頼りになります。
読書感想文用の本といえば文学作品、というイメージがありますが、スポーツ選手の伝記、動物や植物、宇宙など自然科学に関する本、環境問題についての本など、さまざまなジャンルから選ぶことができます。開催中の東京オリンピック・パラリンピックに合わせ、スポーツにまつわる本を集めたコーナーもあります。
自分で本を選ぶのが難しいと感じたら、司書さんに相談するのもおすすめ。昆虫が好き、花が好きなど、興味のある分野を伝えると、本選びを手伝ってくれます。「興味の対象が分かれば、おすすめの本を紹介したり、関連の本が並んだ棚を見てもらったりすることができます」と坪内さん。棚に並んだ本を実際に手に取ってみることで「おもしろそう」「思ったよりページ数が多くて読むのが大変そう」「イラストや写真が使われていて読みやすそう」と、本を読むイメージがわきやすくなります。
また、島根県立図書館では、本を選ぶための本(読書案内)や、読書感想文の書き方の本も借りることができます。さすが図書館。何でもありますね。ふだんは図書館を利用しない人も、この機会に図書館に行ってみるのもいいのではないでしょうか。
〇必要な手順は5つ!読書感想文の書き方
さて次は、感想文をどう書いたらいいかですね。本は読んだものの、原稿用紙を前にすると、何から書いていいのか分からず、嫌になって「明日にするか」となる人も多いのでは。そこで、山陰中央新報のコラム「明窓」執筆者、松村健次・論説委員長による「分かりやすい読書感想文の書き方」をお届けします。松村論説委員長は新聞社には珍しいくらいの優しいおじさんで、公民館などでの講演でも人気があります。「伝えたいことを、わかりやすい文章で書く」という点は、読書感想文も新聞も同じとのことです。
①読む本を選ぶ
 読書感想文を書くためにまず必要なのが、本を選ぶことです。指定図書があれば別ですが、そうでなければ、あなたが好きな分野や興味を持てそうなテーマの本を選んでください。
 小説が好きな人は夏目漱石をはじめ日本や海外の文豪の作品を、歴史が好きな人は偉人伝を読んでもいいでしょう。
 東京五輪に続いて、夏の甲子園も熱戦が続いていますが、スポーツが好きな人は、過去の名選手たちを扱った本を選んでみてはどうでしょう。
 関心のないテーマでは、なかなか読む気にもなれません。そうなると、感想文を書くこともできません。
 本を選んだら読み始める前に、その本を選んだ理由や、読む前の印象をメモ書きしてください。感想文を書き始める際に役立つでしょう。
②本を読む
 本を読んでいるそばに筆記用具を用意してください。読み進むうちに「このセリフは格好いいな」「この文章はすてきだな」という部分が出てくると思います。
 あなたが買った本であれば、直接書き込むことができますが、図書館などで借りた本ならば、メモ帳にその表現と、何ページ目に書いてあったかをメモしてください。感想文を書く際に役立ちます。
③書きたい内容を整理する
 読み終わった後、いきなり感想文を書き始めようとしても、なかなか考えがまとまらない人が多いと思います。
 まずは何を書きたいか、伝えたいかをどんどん挙げ、メモ書きしてください。その中で重要なものから順番を付けていきましょう。上位の内容が感想文の重要な要素になります。
④構成を考える
 文章の構成(組み立て)を考える際には、「起承転結(きしょうてんけつ)」という言葉をよく聞くと思います。簡単に言うと▽起(物語の始まり)▽承(始まりの続き)▽転(逆転が起こる)▽結(結果)―の四つに分けて組み立てるという考え方です。
 しかし、文字数が限られている読書感想文では、わざわざ途中で「転」(逆転が起こる)を入れる必要はないでしょう。
 「はじめ」「なか」「まとめ」の三つで十分です。
 「はじめ」では、まず本の内容を紹介します。①で挙げた、選んだ理由や読む前の印象を書き込んでもいいでしょう。
 「なか」は、感想文の中心になる部分です。本を読んで感じたこと、心が動かされたことを書いていきます。ここで、②でメモ書きした「このセリフは格好いいな」「この文章はすてきだな」といった表現を使えばいいでしょう。
 最後の「まとめ」は、本を読んで考えたことをまとめます。読む前と読んだ後で「自分の心がどう動いたか」「自分の生活にどう生かしたいか」にポイントを置くと書きやすいでしょう。同時に、読み手にとって印象に残る文章になると思います。
⑤文章を読み返す
 書き終わったら一度、じっくりと読み返してみてください。文字の間違いがあるかもしれません。また、足りない部分に気付くかもしれません。
 自分が「読み手」として初めて手に取ったと思って読んでください。あなたが読んで分かりにくい表現は、他の人にとっても分かりにくいのは当然です。
 読む人にとって分かりやすい表現を心掛けてください。それは新聞記事も同じです。
 いかがでしたか。読みながらメモをしていけば、いざ原稿用紙に向かっても困らずに書ける気がしてきました。
 本の選び方や感想文の書き方のポイントが分かってくれば、後回しになりがちな読書感想文にも手がつけられそう。頭を悩ませる宿題は早めに片付け、すっきりとした気分で夏休みを存分に楽しみましょう!
 






  






