鳥取砂丘の南東にある多鯰ケ池(たねがいけ)の東側を走る旧道は心霊スポットとして知られる。山沿いで夜走ると明かりも通る車もなく、ただでさえ気味悪いのに、幽霊が出るとされるホテル廃虚や「幽霊看板」と呼ばれる立て札があった。誰が設置したのか分からないが、木の板に手書きの赤い字で「み仏あらわれしゆえ…(以下解読不能)」と幽霊が出る旨、書いてあった▼30年ほど前の学生時代、肝試しで抜いて持って帰った。しばらくマイカーに放置していたが、霊感の強い親友に「絶対戻した方がいい」と言われ怖くなり、返しに行った▼旧道はもともと国道9号。1964年東京五輪の時は聖火リレーのコースになり、池付近が中継地点だったようだ。当時、鳥取市街から砂丘に行くには、この道を通って池を回り込んでおり、池もボートに乗るカップルでにぎわったと聞く。65年に池の西側に新しい国道9号(現在は県道)ができ、砂丘へのアクセスが良くなると、池も旧道も存在感が薄れていった▼近年、多鯰ケ池ににぎわいを呼び戻そうと地元住民らが散策道整備やイベント開催に取り組んでいる。圧倒的な知名度と存在感を誇る砂丘と、隠れた名所の取り合わせは、観光の幅を広げるはずだ▼多鯰ケ池のほとりには蛇にまつわる伝説のある開運スポット、多鯰ケ池弁天宮もある。旧道とともにミステリーツアーと銘打って売り込むといいのではないか。(志)