名刺。言うまでもなく、自分の所属、肩書、名前を渡す相手に知ってもらうビジネスアイテムだ。新人時代、相手への渡し方、受け取り方を先輩から指導された人も多かろう。
都会地で営業職場にいたとき、同業他社の先輩から言われたことがある。「名刺を切らしまして」と言い訳をするのは、「私は商売をする気がありません」と言っているのと同じ。パーティーや懇親会なら、絶対に出席人数以上の枚数を持っておくべきだ、と。教えを守って今でも、仕事用とボランティア用の2種類の名刺を複数箇所に入れている。
しかし、最近は名刺に対する意識が変わってきたのかもしれない。某市役所職員と、ある行事の打ち合わせをした際のこと。初めて顔を合わせるのだから、まず名刺交換をとあいさつしたら「名刺を持ってきていません」と。
次の打ち合わせには前回の人の上司が出席した。初顔合わせなので名刺を差し出すと「持ってきていなくて」。2人とも打ち合わせはテキパキこなし、仕事はできる人だった。偉ぶったところもない。自費で作る名刺を民間人に渡すのはもったいない、とでも思われたのか。
老婆心ながら、「商売(仕事)をする気がない」と相手に思われても困るだろう。なるべく早く、手渡せなかったおわび状とともに名刺を郵送してはどうか。多用はできないが、普通に名刺交換するより印象的な場合が多いらしい。(富)