過去最多の金メダルと、爆発的な感染拡大。新型コロナウイルスの影響で1年延期された上、土壇場でほぼ無観客に変わった東京五輪は、光と影のコントラストがあまりにも強い大会になった。「やって良かった」と言い切れるかどうかは、閉会式を終えた今日からの感染状況次第だ▼開幕までは開催に対する逆風が強かった。そんな中で実力を発揮し、メダルラッシュにつなげた選手たちの健闘を、まずは称(たた)えたい。山陰両県出身者の活躍は見事だったし、スケートボードなど新たな若手の台頭が目立ったのもうれしい▼一方、失敗だったと思うのは、政府が「安全・安心」を強調し過ぎた点。国境を越えて人が集まる「祭典」は、民俗学の言葉を借りれば非日常の祭りなど飲食が付きものの「ハレ」の日の到来を意味する。自粛が日常化した「ケ」の日々に気力が枯れ気味だった人々の気が緩むのは当然。しかも五輪のために夏休みの入り口が4連休になった▼今更遅いが、テレビは20日間近くも、朝から晩まで五輪、五輪。中には絶叫調の中継もあった。これでは感染力が強い「デルタ株」の火の手に油を注ぐようなもの。会話も弾むし、じっとしてはいられなくなる▼古来、吉凶は表裏一体で、交互に来るとされる。メダルラッシュの吉報の裏で進んだコロナの「第5波」は、まだ頂点が見えない。次は政治や行政、そしてわれわれが頑張る番だ。(己)