フレンチトーストが入った箱にのしを付けて法事パンの代わりに販売する専門店=松江市東朝日町、せるくる
フレンチトーストが入った箱にのしを付けて法事パンの代わりに販売する専門店=松江市東朝日町、せるくる
おはぎや赤飯の横に、お供え用のパンが並ぶスーパーの売り場=松江市学園2丁目、みしまや学園店
おはぎや赤飯の横に、お供え用のパンが並ぶスーパーの売り場=松江市学園2丁目、みしまや学園店
フレンチトーストが入った箱にのしを付けて法事パンの代わりに販売する専門店=松江市東朝日町、せるくる おはぎや赤飯の横に、お供え用のパンが並ぶスーパーの売り場=松江市学園2丁目、みしまや学園店

 新型コロナウイルス禍で法事の自粛・縮小が相次ぎ、山陰両県独特の風習「法事パン」として親族らに配る、あんパンの注文が激減した。対照的に、盆や彼岸のお供え用としてスーパーに並ぶ、あんパンは販売が微増。もらうパンが減った代わりに買い求めるのか、法事パン文化に変化の兆しが現れている。

 「注文が9割くらい減った」。足立製パン(境港市中野町)の足立良三社長は法事パンの需要減を嘆く。他地域でも事情は同様。大山製パン(益田市高津1丁目)は普段なら顧客1人から10箱受ける注文が3箱に減るなどし、パンの製造量が3分の2に落ち込んだ。

 法事パンは、島根県全域と鳥取県西部、岡山県津山市でみられる風習。法事の時、参加者にお礼として、箱入りのまんじゅうを渡す風習がもともとあり、1960年ごろから、代わりにあんパンを渡す人が増えて定着したとされる。

 注文減少は、コロナ禍で県外在住の親戚が帰省できなかったり、密集、密閉、密接の「3密」を避けるために法事を自粛、縮小したりする例が相次ぐからだ。

 一方、同じあんパンをお供え用として盆や彼岸に時期限定で売り出すマツヤ神戸屋(松江市矢田町)によると、ギフト店を通じた法事パンの受注はコロナ禍前と比べて半減したのに、スーパー店頭で売るお供え用は販売がわずかに伸びた。

 松崎直彦社長はコロナ禍で県外への旅行が減り地元に目が向く中で「地元の商品を選ぶ人が増えているかもしれない」と推察。ハスをあしらった特別な包装のパンが並ぶのは期間限定ということもあって、県外大手メーカー製でなく地元メーカー製を選ぶ流れがお供えパン需要増の背景にあるとみる。

 法事パン文化にはコロナ禍以前から、核家族化が進むにつれ「あんパンばかりたくさんもらっても食べきれない」という悩みがつきまとうようになっていた。

 あんパンだけでなく、クリームパン、メロンパンとパンの種類が多様化しており、食パンやフレンチトーストも選択肢に入る。

 フレンチトースト専門店・せるくる(松江市東朝日町)には「あんパンの代わりにしたい」という注文が舞い込む。冷凍商品で日持ちすることも喜ばれるという。尾添哲也代表(50)は「代わりに使ってもらえるとうれしい」と話す。

 法事に限らず、何を贈るかに悩み、カタログギフトが人気を博す昨今。お供えパンの需要増は「もらうパン」から「選んで買うパン」へと変わりつつある消費者の意識がコロナ禍で顕在化したのかもしれない。 (森みずき)