韓国の仁川国際空港に設けられた投票所で期日前投票をする有権者(共同)=5月29日
韓国の仁川国際空港に設けられた投票所で期日前投票をする有権者(共同)=5月29日

 韓国の大統領選挙が投票日を迎えた。選挙の動向に隠れているが、今年は日韓国交正常化60年の年。条約署名が6月22日ということもあり、革新系野党の李在明(イジェミョン)氏と保守系与党の金文洙(キムムンス)氏のどちらがこの6月選挙を制するかは気になる。

 韓国ではしばしば政権浮揚に「対日批判」を使う政権が登場する。2012年、当時の李明博(イミョンバク)大統領が島根県・竹島に上陸したのもその一例で、日韓関係は悪化。逆に保守系の尹錫悦(ユンソンニョル)前大統領は友好的で、両国間の往来者は昨年1200万人を超えて過去最多を更新した。

 韓国では政権が代わると官僚から何から全て変わってしまう。その点はアメリカ政治と同じで、新政権が前政権と正反対の対応を取ることもある。それが韓国民主主義のスタイル、といえばそれまでだが、「竹島」領有権や歴史認識などの課題の扱いはその都度不透明になる。

 日本は政権が代わっても継続性が重視される。いわば「言わない美徳」が通用する国。一方の韓国は「言わないと始まらない」国で、激しいやりとりの末に着地点を探る。渥美清さんが演じた「フーテンの寅さん」の決め台詞(ぜりふ)「それを言っちゃあおしまいよ」は韓国では通じないようだ。

 選挙では韓国経済のてこ入れが最大の争点で対日批判カードは温存されていたが、日韓友好60年の歴史の上に、日本には「モノ言う態度」で韓国次期政権との関係を深める姿勢は必要だろう。(裕)