この時勢だからか、ひときわ味わい深く感じる。「大切なものほど、奥にある。」-。島根県奥出雲町が昨年設けた町のブランドメッセージだ。町民有志らが地元の「いいね!」と感じるところを出し合い、3候補から町内外の投票で決めたという。
説明文にはこうある。「子どもの頃、大切なものは、引き出しの一番奥にしまってた。隠してるんじゃなくて、そこにあるのが安心するから」。手元の広辞苑を引くと「奥」には「内へ深く入った所」のほか、「大切にすること」という意味も確かにあった。
メッセージを基に作成したロゴマークは「奥」の字が笑っているようにデザインされている。「奥」の中にある「米」の字は地元が誇るブランド米「仁多米」を表現しているそうだ。米価高騰の折、その大切さが身に染みる。
先月あった町制施行20周年記念式典には、隣接する広島県庄原市からも参加があった。宍道駅(松江市)と備後落合駅(庄原市)を結ぶJR木次線のうち“奥”にある出雲横田駅(奥出雲町横田)-備後落合駅間は利用が特に低調で、存廃を話し合う国の再構築協議会入りが取り沙汰される。
「国ではなく、地元から独自に(沿線の活性化策を話し合う)協議会を立ち上げよう」。式典に来賓として出席した国会議員がこう呼びかけ、路線存続へ向け知恵を結集する必要性を訴えた。奥にある「大切なもの」を手放すのはもったいない。(健)