ジャイアントパンダ「結浜」を見るため訪れた大勢の観光客=5月24日、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド
ジャイアントパンダ「結浜」を見るため訪れた大勢の観光客=5月24日、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド

 プロスポーツの世界で、選手の移籍はごく当たり前に行われる。シーズンが終了し、入退団の発表が続くバスケットボールB1島根スサノオマジックで、ポイントガードの山下泰弘選手は期限付き移籍していた佐賀バルーナーズへの完全移籍が決まった。

 佐賀のB1昇格に貢献し、期間延長で3シーズンを過ごした。送り出す側として寂しさはあるが、佐賀のブースターは喜んでいることだろう。

 こちらは完全移籍とならず、契約満了で一斉帰国することになった。和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドに所属する看板選手のジャイアントパンダたちである。「浜家」と呼ばれる母と子3頭は日本生まれだが、所有権は中国にある。今月28日の出発に向けた隔離検疫で屋外公開が見納めとなった後も別れを惜しんで訪れる人が絶えない。それほど愛され、繁殖実績も評価されていたのに「なぜ?」。悲しみが広がっている。

 政治的な意図を勘繰りたくなるのはパンダが外交カードに使われてきたから。返還は白浜町長の台湾との近さが関係していると臆測が流れ、一方で新たな貸与が首脳会談の手土産になるとの希望的観測も。

 あれこれと考えるうちに、翻弄(ほんろう)されるパンダが不憫(ふびん)に思えてきた。浜家にとっては見知らぬ祖国ですむ環境は変わる。移動も暑さを避けて契約期限の8月より前倒しされたが、体調を崩しはしないか。もはや無事を祈るほかない。(史)