中国政府から貸し出されたジャイアントパンダから生まれたシャンシャン(雌5歳)がきのう、東京・上野動物園で最後の観覧日を迎えた。あすにも中国へ旅立つ予定だ。かわいい動物と言えばパンダ。中国側からすると、外国と良好なつながりを持つための「外交カード」の側面もある。
パンダ外交で思うのは、日韓両国が領有権を主張する竹島(島根県隠岐の島町、韓国名・独島(トクト))とニホンアシカ。江戸時代から昭和初期にかけて、狩猟や動物園での観覧対象などとして日本人の暮らしに深く関わった。
韓国の軍事力で竹島が不法に占拠された1950年代、文化財や自然保護の観点でニホンアシカを取り上げておれば、竹島の帰属を巡る国際世論は動いただろうか、と想像する。
愛らしいパンダも、19世紀に中国・四川省を探索したフランス人宣教師が外国人として初めて見たのは、民家にあった毛皮の状態だったという。生きたパンダを見たいという欧米諸国民の関心を、外交に使えるとみた中国の政治指導者の思惑があり、世界で熱烈歓迎を受ける現在につながっている。
ニホンアシカは絶滅したが、国際的な規約で決められた学名「ザロフス・ヤポニクス(Zalophus japonicus)」がある。日本側にしかできない地道な研究や情報発信が必要だ。「独島アシカ」の表記が学界で通るのは、研究の素人でも看過はできない。(万)