政府が示した「ふるさと住民登録制度」を疑問視する丸山達也知事=松江市殿町、島根県庁
政府が示した「ふるさと住民登録制度」を疑問視する丸山達也知事=松江市殿町、島根県庁

 政府が地方創生に関する今後10年の指針となる基本構想案で示した「ふるさと住民登録制度」を巡り、島根県の丸山達也知事が11日の定例会見で「本筋をやってほしい。われわれが解決したいこととかけ離れたおとぎ話をされても困る。怒りではなく、悲しみを覚える」と疑問視した。

 政府は今月3日に有識者会議を開き、仕事や趣味などで継続的に居住地以外の地域に関わる「関係人口」の増加に向け、自治体が「ふるさと住民」として登録する制度を創設し、今後10年で1千万人を目指す方針を示した。

 丸山知事は、野球の投手が投球ではなく、牽制球に集中している状況と例えながら「関係人口が定住人口につながらなければ意味を感じない。緩い空気みたいなふわふわした人口を追いかけることは理解しがたい」と批判。「われわれが直面しているのは住む人、働く人が減り、離島の航路や路線バスが減便していくことにどう取り組むかだ」と強調した。

 人口の自然増減や社会増減に関係ない数値を追い求めることは労力の無駄遣いだと指摘した上で「これが地方創生なのかと、普通思う」と話した。関係人口は付加価値としての意義はあるとの考えも示した。

 ふるさと住民の登録制度は、東京圏から地方へ転入する若者の比率を増やし、人口の偏在解消を進める狙いで、観光のリピーターやふるさと納税の寄付者らがスマートフォンアプリを通じて申請、自治体が登録証を発行する仕組みを想定。対象者にはイベントやボランティア募集の情報や、行政サービスの提供などを検討している。

(曽田元気)