給水所に持ち込まれたポリタンクに水を注ぐ出雲市職員(手前)=19日午前11時3分、出雲市多伎町小田、市多伎行政センター
給水所に持ち込まれたポリタンクに水を注ぐ出雲市職員(手前)=19日午前11時3分、出雲市多伎町小田、市多伎行政センター

 島根県東部と西部の境界にある出雲市多伎町の国道9号付近は、度々道路沿いの斜面が崩れ、交通が分断されるなど大きな影響を及ぼしてきた。18日の被害も国道9号の亀裂だけでなく水道管の破損による断水が発生。道の駅が休業し、住民が水を求めた。

 市が19日朝、現場近くの多伎行政センター(出雲市多伎町小田)に設置した給水ステーションでは、ポリタンクを手にした市民が続々と訪れた。

 現場から約100メートルの距離の恵堂地区に住む会社員藤田剛さん(50)は18日午後6時ごろ、市職員から地滑りの恐れがあると告げられ、両親と妻の家族4人で、多伎町内の親戚宅に避難した。

 自宅は地滑りの警戒区域にあり「いつ自宅に戻ることができるか分からないので心配だ。早く断水が解消されてほしい」と、20リットルのポリタンク6個を車に運び入れた。

 断水の影響で、国道9号沿いにある道の駅キララ多伎(同町多岐)や多伎いちじく温泉(同町久村)も臨時休業となり、道の駅はトイレと情報提供コーナーのみ稼働している。

 キララ多伎の柳楽順也駅長(53)は「トイレの水がいつまで持つかどうか分からず、出雲市や国土交通省に問い合わせたが情報がない。営業(再開)は白紙の状態だ」と嘆息する。

 温泉旅館「はたご小田温泉」(同町小田)は、急きょ新規の予約受け付けを停止。20、21の両日は予定通り予約をしていた宿泊者を受け入れるが、22日以降の予約のキャンセルも発生した。女将の石飛奈美さん(45)は「コメのとぎ汁を貯めて皿の予洗いに使うなど節水に努めているが2日間が限界だ。この夏は天候が不順が続き、夏休み終盤の週末は期待していただけに、復旧してほしい」と願った。

 並行する山陰道が迂回(うかい)路として機能しており、かつてのように東西の往来が寸断されることはないが、多伎町内では救急車や消防車の現場到着が遅れる可能性もあり、出雲消防本部指令課の金山利宏課長は、「使える道路で最短のルートを選ぶ。国道9号の機能が早く戻ってほしい」と望んだ。