突然の知らせだった。若い頃に鳥取で仕事を共にした先輩記者が亡くなった。関心事を追いかけ、情報公開にこだわり、政治、行政に目を光らせる真っすぐな記者だった。
鳥取県政で机を並べた20年前、国政で小泉政権が国と地方財政の三位一体改革を進めた。定例会見で自身の考えを交えて質問する先輩記者に、片山善博知事(当時)は「改革の名に値しない『床下えせリフォーム』」などと国を批判。やりとりは会見後、知事室の前でも続いた。国の言いなりにはならない。そんな気概があった。
先輩記者は古里に帰り、益田市議に転身し、政治家になった。国主導の平成の大合併から20年。益田市を含めて合併自治体は三位一体改革の代償に苦しみ、周辺部で衰退が進み、人口減少に歯止めがかからない。
参院選が始まった。われわれにとって最も重要なのは地方を巡る政策だ。聞こえがいい対策ではなく、日本の将来を考えて何をするのか。政党や候補の訴えを見定めたい。
透明性が叫ばれた20年前に、マスコミの求めもあって鳥取県は全国に先駆けて予算編成過程を公開した。一方、政界ではいまだに「政治とカネ」を巡る不透明さが消えず、対応が参院選で再び争点の一つになっている。政治の信頼回復が進まず、肝心の地方の政策が足踏みするのは許されない。「いいかげんちゃんとしんさい」。真っすぐな先輩記者ならずとも声を上げたくなる。(添)