激戦を終え、健闘をたたえ合う優勝した中京大中京と日本文理の両校ナイン=2009年8月24日、甲子園
激戦を終え、健闘をたたえ合う優勝した中京大中京と日本文理の両校ナイン=2009年8月24日、甲子園

 驚異の粘りだった。16年前の夏の甲子園決勝。日本文理(新潟)が4-10の九回2死走者なしから4安打に3四死球を絡めて、優勝した中京大中京(愛知)から5点を奪い、1点差まで追い上げた。

 日本文理の強打は、準々決勝の立正大淞南戦でアルプススタンドから目の当たりにした。決勝で諦めずに後続の打者につなぐ姿やスタンドのどよめきは今でも語り草だ。先日、松江市内で少年野球の大会を観戦すると、追い上げるチームと重ね合わせて、16年前の決勝が話題に上った。

 高校野球の島根大会がきょう開幕する。7月10日は語呂合わせで「納豆の日」でもある。点差が離れても最後まで何が起きるか分からない。1点を取られても次の1点を防いでいれば勝機が訪れるかもしれない。決して諦めることなく「粘りの夏」にしてほしい。

 政治も踏ん張りどころを迎えている。参院選のさなか、トランプ米大統領が、貿易相手国・地域別に課す「相互関税」について8月1日から日本に25%をかける方針を表明した。赤沢亮正経済再生担当相は4月以降、7回にわたって渡米。米側と関税政策の見直しを求めて交渉を続けるが出口は見えない。

 石破茂首相は「安易な妥協は避ける。国益は守る」と繰り返す。粘りの交渉の先に何が待ち受けるのか。日本側のペースに持ち込むことができなければ、石破政権の行方は「米」が「占」う一面も出てきそうだ。(吏)