観光客で混雑する京都・清水寺周辺=2024年12月
観光客で混雑する京都・清水寺周辺=2024年12月

 京都市内の大学に通った4年間の住所は「北区北野紅梅町」だった。梅の香が漂ってきそうな美しい地名に暮らしたものだと思う。学問の神・菅原道真を祭る北野天満宮に近く、境内に紅梅や白梅をはじめ約50種、1500本が植わる梅林が由来か▼卒業後も古都の風情を感じたくて年に数回は京都を訪れる。最近やはり目につくのが外国人観光客の異様な多さだ。清水寺がある東山地区に暮らす知人によると、数分置きに来るバスが何便も満員で乗れず、30分待つこともあるという▼私道や民家への立ち入り、ポイ捨てなどマナーの悪さも含めて、市民生活に影響が出るオーバーツーリズム(観光公害)は深刻な課題なのだ。市が検討する市民と観光客で市バスの運賃に差をつける「市民優先価格」の導入や宿泊税の上限額を1泊1万円に引き上げる方針も、公害対策に有効に使われるのであれば、納得できる「値上げ」だろう▼先日訪れた伏見稲荷大社でも日本人を探すのが難しいくらいだったが、当然ながらマナーが悪い外国人ばかりではない。混雑していた近くのそば屋で4人掛けの席にいた白人カップルが、2人掛けの席に替わると店員に告げていた。店先には白人の老夫婦と少年。席を譲られた3人は「センキューソウマッチ(本当にありがとう)」と何度も繰り返していた▼観光公害の地にそんな優しいやりとりがあることも心に留めておきたい。(衣)