横浜市に設置された充電器と電気自動車(資料)
横浜市に設置された充電器と電気自動車(資料)

 環境対策を旗印に、国は電気自動車(EV)の普及を後押ししてきた。近所に充電施設が見当たらない地方在住の身には、ガソリン車が使えなくなる不安も頭をよぎるが、どうやらそうでもなさそうだ。

 EVは特に新しい技術ではなく、20世紀初頭にはアメリカで走る車の3分の1はEVだった。変えたのは自動車王のヘンリー・フォード。庶民にも手の届くガソリン車を大量生産し、街からEVは姿を消した。

 ガソリンや軽油を燃やす内燃機関の車が優れている点は、軽く少ない燃料で長距離移動ができるところ。現在「砂漠で立ち往生しない車」には、これしか選択肢はない。日本の中山間地域でも軽自動車を先頭に大活躍する。

 それが温暖化対策で守勢に立たされた。世界中で走る自動車は15億台。人類が排出する温室効果ガスの約16%を排出するからだ。一方で、水素や新燃料など二酸化炭素を出さない技術が追い付き、内燃機関は今後50年以上地球上に存在するともいわれる。

 現在EVは補助金と税金で優遇されているが、それは日本社会の実情に合うのか。福祉も農業も流通も内燃機関の車に頼らざるを得ない地方で、この政策誘導は空回りしていないか。ガソリンの価格安定やガソリン税の見直しと合わせて、自動車税も見直さないと、地方の生活者は立ち往生しかねない。どこから手をつけるのか、参院選ではしっかり議論を聞いてみたい。(裕)