学生の時、中国大陸をあてもなく旅して内陸部の四川省成都に立ち寄った。せっかくならその姿にお目にかかりたいと、パンダ繁殖研究基地を訪れた記憶がある。和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで飼育されていた親子4頭の返還先である。大勢のファンに見送られ中国へ渡ったパンダたちは元気に過ごしているだろうか。
中国語でジャイアントパンダは「大熊猫」と言う。猫のような愛らしさを持ちながら、分類はれっきとしたクマ科。そう考えると、同じ仲間なのに扱われ方が随分と違う。ツキノワグマやヒグマの出没が各地で相次ぎ、襲われて死亡する被害まで起きている。
パンダとの別れを惜しむ人たちが続々と来園していた時も、返還されてから今までも本紙の片隅で目撃を伝える「クマ情報」が途切れたことはない。初夏は親離れした若いクマが歩き回り、続いて繁殖期を迎えた雄の行動が活発になるとされる。行政の担当者に聞けば、異常気象のせいか、こうした生態の周期にずれが見られ、動きが読めなくなっているのだとか。
国は市街地に出没した場合、銃の使用を条件付きで可能にする緊急銃猟のガイドラインを公表した。いざ市町村が運用するとなると、難しい判断や対応を迫られることになろう。ハンターも誤射のリスクを背負ってまで、発砲できるものかどうか。
パンダは中国に返した。クマは人里から山の奥へ返したい。(史)