昨年の出雲駅伝でスタートする選手たち=2024年10月14日、出雲大社前
昨年の出雲駅伝でスタートする選手たち=2024年10月14日、出雲大社前

 今月、東京の私立大学学長を島根に招き、じっくり話を聞く機会があった。大学の現状を聞くと「地方出身学生が減り、全国の人材が欲しい大学側の希望とはずれが生じている」とのことだった。

 かつて学生の出身地は地方7割・首都圏3割。「郷里が違う多様な学生が切磋琢磨(せっさたくま)する、とても良い環境でした」と同学長。その後人気校となり受験生は増えたが、学生は首都圏7割・地方3割となり今や首都圏の地元大学の様相だ。

 東京への若者流入は、進学時より就職時が4倍も多い。経済的理由が進学を躊躇(ちゅうちょ)させている。多くの地方出身学生が月10万円の仕送りとアルバイトの10万円でやりくりし、合宿やサークル活動に使う余裕も少ないという。

 同学長は地方出身者への奨学金制度を拡充。また大学の枠を超え「東京の私学と地方大学が連携し、特色ある学びの仕組みづくりができないか」と考えている。実現すれば地方と東京の距離感は一気に縮まる。

 江戸時代、江戸に出て学問を修め郷里に戻ることを「遊学」と言った。広い意味の「遊び」の中で、人と出会い人生の目標を得ることは多い。大学はそういう場であってほしい。郷里の役割は若者が戻って活躍できる場を増やしていくことだ。つかぬ話だが、同学長の目標の一つは「出雲駅伝で本学の復活出場を果たすこと」。いろいろな「縁」を大切に育て、「遊学の襷(たすき)」がつながっていけばと思う。(裕)