新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、医療提供体制の逼迫(ひっぱく)度を示す「病床使用率」の島根県の情報の伝え方について、県西部の医療現場から改善を求める声が上がる。県全域でまとめた数字しか公表していない現状では地域別の実情が見えず、住民に自身が暮らす地域の厳しい状況が正しく伝わらないためだ。            (勝部浩文)

 

 「71・0%と55・9%」ー。県が公表する20日現在の即応病床と確保病床数に対するそれぞれの使用率だ。即応病床255床、確保病床324床に対し、入院患者は181人。見方によっては、どの地域もおしなべて「余裕」があるようにも読み取れる。

 だが、現場の感覚は異なる。「石見部の受け入れ病院は、すでにどこも満床ではないか」。益田赤十字病院(益田市乙吉町)の立石正計事務部長が窮状を訴える。医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な石見部は専用病床が少ない。ベッド数の多い出雲部が加わることで全体の使用率が低くみえると指摘する。同病院は盆前から専用の13床は満床が続く。

 他病院や地域別の状況は、前線にいる医療従事者でも関係者から伝え聞くしかなく、正確な数値が分からない。大田市医師会の福田一雄会長は、自宅療養者が出る事態を予想し、コロナ患者対応の訪問診療体制を早急に整える必要があると考えているが「地元の病院の病床の運用状況さえ、分からない」と戸惑う。情報がなければ、さまざまな判断に支障が出かねず「患者のプライバシーに配慮しつつも、情報提供の仕方を見直すべきではないか」と求める。

 鳥取県は東、中、西部の保健所ごとの病床使用率を公表。一方、島根県は「県全域で入院調整している」ことを理由に、地域別での状況の公表には否定的だ。20日の定例会見で丸山達也知事は「あくまで県全体で対応しているので、県全域の使用率を出すことに変わりはない」と述べた。