子どもの新型コロナ感染を巡る状況
子どもの新型コロナ感染を巡る状況

 世界各国で新型コロナウイルスに感染する子どもが急増している。感染力の強い変異株「デルタ株」のまん延に伴い重症化が増え、死者の3割を占めた国も。軽症でも後遺症が長引くケースがあり、専門家は12歳以上のワクチン接種率を高めるよう訴える。学校の新学期を控える日本でも増加しており、集団感染を防ぐための対策強化が急務だ。

 世界最悪の水準で感染が拡大したインドネシアでは7月、毎週100人以上の子どもが亡くなった。現地の小児科学会の会長はツイッターで「10~18歳は全人口の10%なのに、コロナの死者の30%を占めた」と指摘し「すぐに12~17歳のワクチン接種を急ぐべきだ」と訴えた。

 日本でも「以前より子どもの感染が多くなっているのは明らかだ」(脇田隆字・国立感染症研究所長)と懸念の声が上がる。厚生労働省によると、今月11~17日の20歳未満の感染者は2万2175人。30代や40代と同規模で、50代よりも多くなっている。

 沖縄県の新規感染者のうち未成年者が占める割合は25%に迫り、これまでで最も高い。全国高校野球選手権大会では選手の集団感染が発生し、試合参加を辞退する出場校が出た。

 米国では今月に入って18歳未満の新規入院患者が過去最多を記録。感染後の後遺症は当初、成人に多かったが、子どもにも目立つようになった。英統計局の推計によると、英国で16歳以下の3万4千人が症状の長期化に苦しんでいる。

 世界保健機関(WHO)の専門家は7月末の記者会見で「子どもが特にデルタ株に感染しやすいわけではない」と指摘し、全体の感染者が増えた結果、ワクチン未接種の子どもに広がったと説明した。

 米小児科学会は食品医薬品局(FDA)に対し、12歳未満へのワクチン接種の迅速な承認を求める。しかし免疫機能が発達途上で接種への反応が予測できないとして、慎重論も根強い。