「博覧会がある限り出さないといけないから、早く会自体がなくならないかなと思うんですよ」。4年に1度開かれる全国菓子大博覧会で、3大会連続の最高賞に輝いた福泉堂(出雲市斐川町直江)の3代目店主・土江徹(48)は「作りたくないけど」が本音だ。それでも出品を続けるのはなぜか。挑み、表現し、超える。その繰り返しの中に答えがある。
(interviewer・今井菜月)
#(中)判断軸は「自分が食べたいか」
#(下)技術と志、次世代に「継承」
やめてくれと言われるまで
砂糖と寒梅粉で形作ったヤマドリは堂々たる尾羽を誇ることなく、静かに前を見据える。国内最大の菓子博の工芸菓子部門に出品した「深山彩秋(みやまさいしゅう)」。マツやモミジ、カンツバキをあしらい、晩秋の情景を描いた。計90品の中から全10品の最高賞・名誉総裁賞に輝いた。

菓子博は5月30日~6月15日、北海道旭川市であった。審査を待つ間、土江の胸には不安があった。迫力のある他の作品を目にし、...