ひたひたと押し寄せる水のように新型コロナウイルスが山陰両県にも迫る。8月に入ってからは、土嚢(どのう)を積みたくなる心境の日々が続く。気が付けば、兵庫に続き岡山、広島の各県も緊急事態宣言の発令地域。山口県も1日の新規感染者が100人を超えた日があり、周囲を囲まれた▼感染力の強いデルタ株が線状降水帯のように上流部の首都圏や大阪などを覆い、流れ出たウイルスが地方に広がる。1日の新規感染者が100人を超す都道府県が30前後に達する日も珍しくなく、中には数日で数百人規模に拡大した県もある。山陰も決して油断はできない▼心配なのは子どもたちへの影響。ちょうど夏休み明けの頃だ。2学期は文化祭や体育祭などの行事が多い。デルタ株のせいで、1年前と違い子どもたちへの感染が増えているだけに、学校現場の対応は大変だ▼東京や大阪など宣言地域では、修学旅行の中止や延期を求める首長発言が相次ぐ。これに対しネット上では「子どもにとってはオリパラよりも修学旅行の思い出が大事」との声も上がる。文部科学省は可能な限り実施に向けて検討するよう求めているが、悩ましい▼大雨などの自然災害なら「早めの避難」と「命を守る行動」だが、コロナ禍の場合はどうすべきか。ちぐはぐな対応で子どもたちが振り回されないよう、首相が自らのメッセージを分かりやすく伝えるべきではないか。(己)