第六章・天に抛(なげう)つ(30)

 

 実は一昨日、横山長知(ながちか)の切迫した顔を見た瞬間に、利長は長知の苦しい胸の内を察した。

 長知は加賀前田家の中で、親豊臣派の頭目に祭り上げられて...