島根県海士町で23日、かつて漁業に使われた「かんこ舟」の競走があり、舟を操る感覚を身に付けていた高齢者が上位を占めた。
かんこ舟は長さ約6メートル、幅約1・5メートルの木製和船。帆やかじがなく、約4メートルの長い櫓(ろ)で速度の強弱や方向を操作する。半世紀前は町内で製造されていたが、船外機付きの繊維強化プラスチック製漁船が主流になると姿を消した。宇受賀漁港にあった2隻を2022年に町民有志の「海の士(ひと)を育む会」が修復した。
競走は3回目で、団体と個人戦で競った。過去最多の18チームと個人9人が出場した。団体戦は200メートルのコースを4人が交代で櫓をこいだ。若い移住者は力加減や細やかな操作のこつがつかめず、思わぬ方向に進んで時間をロスしていた。
100メートルのタイムを競う個人戦は9人中、8人が60代以上の経験者。少年時代に身に付けた操船技術を生かして圧倒的なスピードと、スムーズな回転で折り返して好記録が相次いだ。
個人戦で優勝した同町御波の永原馨さん(65)は「高校卒業までかんこ舟があり、素潜り漁で使った。小刻みにこいで左回りにすると速いと練習で試していた」と話した。
団体戦は菱浦チームが優勝した。
(鎌田剛)













