80年前の終戦の日、朝鮮は日本の植民地支配から解放された。しかしその後、韓国と北朝鮮という二つの国家に分断。かつて「地上の楽園」と言われた北朝鮮からは、圧政と生活苦から逃れようと国を抜け出す「脱北者」が相次ぐ。「帰還事業」で海を渡り、四十数年を経て脱北した女性と、その娘の人生は壮絶の一言に尽きるものだった。(敬称略、文は共同通信「戦後80年の残影」取材班、写真はソウル支局記者・金民熙)

 「社会主義はどういうものなのか、自分の目で確かめてみたい」。川崎栄子(83)が北朝鮮に渡ろうと決意したのは1960年、まだ朝鮮学校の高級部3年の時だった...