11年ぶりにJR只見線が全線再開し、復旧した鉄橋を渡る記念列車「再会、只見線号」=2022年10月1日、福島県金山町
11年ぶりにJR只見線が全線再開し、復旧した鉄橋を渡る記念列車「再会、只見線号」=2022年10月1日、福島県金山町

 福島県奥会津地方の山あいを縫うように走るJR只見線は、鮮やかな景観から「秘境路線」として名高い。紅葉の時季を迎えるこれからは大勢の観光客でにぎわうだろう。

 2011年7月の新潟・福島豪雨で被災し、一部区間で不通が続いた只見線が全線開通したのが3年前のきょうのこと。約90億円と多額の復旧費を要した再開区間は、福島県が線路や駅舎を保有し、JR東日本が運行を担う「上下分離方式」に移行。県や地元自治体が毎年約3億円を負担している。

 とはいえ、地元では慎重論が根強かったそうだ。それを説き伏せたのが当時只見町長だった目黒吉久さん。「これは『負担金』ではなく、会津が観光で生きていくための将来への『投資』として考えよう」と訴えた。その強い覚悟が結実し、再開後は紅葉時季も重なり「山手線並み」の混み具合になったという。

 翻ってわが山陰。7年半前のJR三江線廃止で、地上20メートルにあり「天空の駅」として親しまれた宇都井駅の価値は低下。JR木次線も一部区間で廃止が取り沙汰される。

 先日の本紙に載った企画『どうする木次線』で大井川鐵道(静岡県)の鳥塚亮社長がこう指摘した。「磨けば光る足元の原石に気付かず、磨こうともせず、よそから宝石を持ってこようとする地域は一生懸命な地域と差がついて当然だ」。本気で鉄路を守ろうとするなら「秘境路線」に学ぶべきことは多いはずだ。(健)