短歌 宮里 勝子選

年輪の濃く浮き立ちて傾ぐ床足裏が聞く書寫山の声        出 雲 井上都由子

 【評】書寫山(しょしゃざん)は、西の比叡山ともいわれ、素戔嗚尊(すさのおのみこと)が降り立ったという伝説もある山 寺。古刹(こさつ)の様子は上句で伝わり、下句の声は感じたものを声とし一首に深みが増した。

枯れ葦に雀とまりてゆふらゆら光脈打つ春の岸辺に        松 江 永原  知

 【評】雀が揺れている様子を、ひかりが脈打つという発想は作者独自のもの。春の光 が優しく差し、葦と共に揺れている何げない光景が三句にも表れてのどかな...