中国電力は3日、原子力規制庁から借り受けた原発のテロ対策施設に関する非公開文書を無断で廃棄し、6年にわたって未報告だった問題の経緯を島根県の丸山達也知事に報告した。島根原発(松江市鹿島町片句)で相次ぐ不祥事を受け、丸山知事は「地域住民からどう見られ、どういったことが求められているかの意識が欠けているのではないか」と苦言を呈した。
県庁を訪れた中電島根原子力本部の北野立夫本部長は「地域の皆さまにご迷惑をお掛けした」と陳謝。長谷川千晃副本部長が問題の経緯と再発防止策を説明した。
これに対し、丸山知事は島根原発で発覚した多数の点検漏れ(2010年)や点検記録の偽造(15年)、巡視業務の虚偽報告(20年)といった過去の不祥事を挙げながら「安全に対する意識が低く、緊張感や責任感が著しく不足している」と批判。「事実を隠したと受け止められても仕方ない」と述べ、広島市の本社を含めて姿勢を改めるよう強く求めた。
中電は同日、鳥取県と松江、出雲、安来、雲南の4市にも報告。鳥取県の亀井一賀副知事は「このような事案が生じると信頼関係は簡単に崩れてしまう」と述べ、松江市の上定昭仁市長は「安全性はもとより、組織風土や意識にも市民の厳しい目が向けられている」とのコメントを出した。
中電が廃棄したのは審査官向けのガイドで、原子力規制委員会は1日、機密文書として扱っていなかったため誤廃棄したとする中電の説明を妥当と認め、再発防止策を了承した。 (高見維吹)