竹谷健教授
竹谷健教授
及川馨院長
及川馨院長
竹谷健教授 及川馨院長

 わが子の新型コロナワクチン接種、どうする? 対象となる12歳以上の子どもがいる保護者で、悩んでいる人は多い。背景にはワクチン自体や副反応への不安があるとみられる。一方、主流となった感染力の強い変異株「デルタ株」は子どもの感染も多く、医師は子どもの接種率を高める必要性を訴える。 (増田枝里子)

 中学3年の長女(14)がいる出雲市内の女性(48)は「正直、打たせたくない」と打ち明ける。人工の遺伝物質を使ったワクチンであることを不安視し、「まだ分かっていない(体への悪影響といった)ことが、何年かたってから分かったら…。打ったら後戻りできない」と思いを語る。

 高校生の娘2人が2回の接種を終えた松江市内の女性(44)は「悩んだが、受けないよりは受けたほうがいいと思った」。高校が募った団体接種に予約。部活動の大会を控えていて副反応を心配したものの、子どもの感染増加を受け「もし感染しても重症化しない安心感は大きい」と話す。

 10代以下の感染者数が全世代に占める割合が増加傾向にあるなど、子どもの感染リスクは拡大している。

 島根大医学部小児科の竹谷健教授(50)によると、10歳未満の患者数は昨年8月には全国1155人(全体の4%)だったが、今年8月は10日時点で2万人を超えた。島根県も同様で、感染者全体に占める10代の割合は5月に7・4%だったが、7月には11・9%、8月22日時点で15・6%と増えている。

 竹谷教授は「特効薬がない以上、子どもにとってもワクチンはコロナ対策の大きな手段だ」と強調。出雲市内の女性が挙げる遺伝物質について「コロナウイルスの一部を体内に作り出すためだけの『遺伝子』で、人の遺伝子の中には入ることはできない」と説く。

 ただ、今回のワクチンが筋肉注射であるため「痛みが独特。いろいろな症状(副反応)が出やすいという面はある」とする。

 予防接種に詳しい、及川医院(出雲市灘分町)の及川馨院長によると、遺伝子組み換えワクチンは二十数年前から世界的に急速に研究が進み、知識や情報が蓄積されてきた。「確かに未知の点もあるが、急に出てきた技術ではなく、しっかりとした学問の基礎がある」と説明する。

 迷う保護者には「1、2カ月前の常識が通用しないほど、子どもを取り巻くコロナも変化した。もはや『子どもは大丈夫』ではなくなっている」と指摘。「あるか分からないワクチンの副反応を恐れるより、かかったら確実にまずいコロナを恐れる方が正しいのではないか」と訴える。

 子育て支援のために医療情報をスマホアプリで提供する「教えて!ドクター」プロジェクトの代表、坂本昌彦医師(44)=長野県佐久総合病院佐久医療センター小児科医長=は「接種後の影響を不安に思う気持ちも分かるが、コロナの後遺症が数年後にどうなっているかも未知数だ。信頼できるかかりつけ医などに質問を投げ掛けてほしい」と呼び掛ける。

 接種の大前提は、強制ではなく、本人の意思に基づくこと。島根県感染症対策室の糸賀晴樹上席調整監(53)は「正しい情報を得てきちんと理解した上で接種する、しないを判断して」とアドバイスする。厚生労働省はホームページのワクチンQ&Aで、接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをしたりしないよう求める。