新型コロナウイルスの感染急拡大による影響が懸念される中で開幕した東京パラリンピックは13日間、539種目に及ぶ全競技を無事に終えた。ライバルと健闘をたたえ合い、チームメートや伴走者とメダル獲得を喜び、肩を抱き合うシーンがいくつも見られた。
日本選手を中心に多くの競技を幅広く中継したテレビと、大きく扱ったメディアの報道もあって、市民は大会に高い関心を示した。パラスポーツに対する理解は確実に深まった。
選手は五輪選手にはない、さまざまな困難を抱えながら大会の舞台にたどり着き、世界の強豪とスポーツの栄光を目指して競い合った。その強い意志と迫力に満ちた身体の躍動に、パラリンピックの理念を感じ取った人も多いのではないか。
生まれながら障害のある人も、病気やけがで身体的な運動が制限されるようになった人もスポーツに親しみ、高い競技レベルを目指すことで、喜びと生きがいを見いだす。そのことを多数の市民が実感したことに、大会の自国開催の意義はあるのだろう。
この大会を将来にわたってより有意義なものにするために、そして障害のある人への偏見や差別がない共生社会の実現に向け前進するために、パラアスリートへの支援が全国で広がり、充実していくことが望まれる。
世界がコロナ禍の暗雲に覆われ、選手は練習機会を確保することが難しくなり、本来の高い競技レベルを維持するのに苦労した。大会は低調なものになるのではないかと心配された。しかし、陸上も競泳も数多くの世界記録とパラリンピック記録が誕生した。
日本選手活躍の背景には、パラスポーツを取り巻く全般的な環境の改善がある。パラリンピックの意義に共感する多くの有力企業が「アスリート雇用」に乗りだしたのはその一例だ。
実績のある選手は、これによって競技生活の基盤が安定し、より良好な練習拠点と数多くの海外遠征に恵まれるようになった。強豪国は既にパラリンピック大会の発展と並行して、選手支援を充実させてきた。日本も今回、その潮流に乗ることができた。
とはいえ、今回活躍した日本勢の中には、大がかりで組織的な援助ではない、地域に根ざした支援の中で競技力を向上させた選手も目立った。
競泳で二つの銀メダルを獲得した日本選手最年少、中学校3年生の山田美幸選手や、ボッチャの個人で金メダルに輝いた杉村英孝選手は、いわば手作りの地元の支援を受け実力を上げた選手だ。
パラスポーツの選手は一人で遠距離移動するのが難しいケースが少なくない。小規模な施設でも、やはり地元に練習拠点があるのはありがたいと感じる選手は多い。
今大会の日本選手の活躍で、国や企業による選手支援が資金面でも指導面でもさらに拡大することが期待される。規模の小さな都市で練習する選手にも、そうした支援が確実に届くよう、目配りが大切だ。
東京都にある国のトレーニングセンターに通う機会に恵まれない選手でも、たくましく成長できるのが理想だ。選手の生活する地域で支援が広がり、活躍に結び付けば、住民の関心は間違いなく高まる。そうした地域はいち早く共生社会を築く軌道に乗るはずだ。





 
  






