全国知事会の新会長に平井伸治鳥取県知事が就任した。飯泉嘉門前会長(徳島県知事)の下では、新型コロナウイルス対策本部の本部長代行を務めた。人口最少県の知事が過去最多40人の知事の推薦を集めたのも、コロナ対策でリーダーシップ発揮を期待した結果と言える。

 政府の戦略性が乏しいため、感染の現場を知る知事らが独自に対策を進め国に対応を求める例が目立つ。政府、与党は国会も開かず、新しい対策を広く議論することには及び腰だ。政府に影響を与えられる知事会の重みは増している。

 政府は菅義偉首相が対策を決めるというリーダーシップの演出も考えていたのだろうが、首相が全てを把握して判断できないのは明らかだ。感染拡大「第5波」によって深刻化する医療の危機、経済や雇用の問題も含めて、より積極的な提案を知事会には期待したい。

 平井氏は「コロナと闘い、新しい日本とふるさとをつくる」をテーマに掲げた上で「未曽有の危機に挑む」「コロナ後の新たな時代をつくる」などを表明した。

 コロナに加え相次ぐ災害、地球温暖化、地域の活力低下、格差の拡大など多くの課題に自治体は直面している。挑戦が不可欠なのは当然だ。

 コロナ対策で平井氏は、日本医師会などとの関係を強化しながら総力戦で立て直す必要性を提唱した。病床の確保よりも、まず感染者数を減らすべきだとし、外出を厳しく制限するロックダウン(都市封鎖)的な施策の導入をより強く政府に求めたのもうなずける。

 知事会は今後、国への要請活動だけではなく、国民に直接働き掛けて行動の変化を促すことができるよう、発信力の強化も肝要である。

 コロナ対策を巡っては昨年、都道府県が自らの基金を使い独自対策を進めた第1波の頃は、東京都や大阪府などで一定の成果を上げた。その後、基金が急減し、国に予算を頼るようになって独自の取り組みは下火になってきたと分析できる。

 現在、自治体がコロナ対策に使える予算は、国からの地方創生臨時交付金が中心だ。自治体の人口や財政力などに応じ配分額の上限が示されている。自治体が得るには国が示すメニューから主に対策を選び、実施計画を提出する必要がある。

 営業時間短縮に協力した飲食店を国が示す基準よりも手厚く支援するには自主財源が必要となるが、税収の減少もあり厳しい。予算不足が独自対策を阻んでいるのである。知事会は自治体の工夫をより生かせる仕組みを国に求めるべきだ。

 緊急事態宣言の発令などについては、都道府県が国に要請、決定するまで数日かかり対策が遅れる。知事が判断すれば発令されるような仕組みの検討を要請したい。

 国と自治体の役割分担の見直しも待たれる。病床確保のため福井県が「野戦病院」を用意したり、ワクチン接種でさまざまな取り組みをしたりと、自治体の方がよりアイデアも柔軟性もある。自治体の多様な取り組みから成功事例を選び、他の自治体に展開もできる。

 一方、国は刻々と変わる事態に対処するのは苦手のようだ。全てを決定できるという幻想は捨て、地方に対策を大幅に任せ、国はコロナの水際対策、ワクチンや治療薬の開発、確保に集中するよう提案したい。