第八章・寛永の危機(27)

 

「城の惣構(そうがま)えと武家屋敷の間には火除(ひよ)け地をもうけてある。城まで燃え移ることはよもやあるまい」

 利常は文机から離れようとしなかった。

 母親のために上皇...