県内の自治体で最高となる3割の還元率を設定した大田市のキャッシュレス決済事業で、導入当初の不調から脱却して利用額が大幅に増え、市が急きょ補正予算を組んで還元額を穴埋めした。還元率を引き上げたことや、使える店が広がったことが要因。

 事業は昨年12月に導入して、手始めに還元率20%で今年1月末までの2カ月間実施した。

 しかし、電子マネーサービスを介する不正出金事件を受け、金融機関によってはチャージ(入金)ができなかったことが影響し、市内での買い物は約3千万円にとどまった。還元額も想定の1千万円の半分の500万円程度に終わった。

 市は、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で消費刺激策としての実施した7、8月の第2期で、還元率を30%(1回の還元額上限2千円、期間1人当たりの買い物総額の上限は1万円)に引き上げた。その結果、キャッシュレス決済に対応できる店舗が昨年末に比べて1・8倍の405店舗に増え、利用が伸びた。

 市の集計によると、飲食店を中心とした買い物総額は、想定の3倍以上の約1億円、還元額も3倍の2400万円となった。

 市は本年度一般会計補正予算案で還元額の穴埋め分など1700万円を追加計上した。

 市は、現金の受け渡しがない「非接触型」のキャッシュレス決済について、利便性に加え、コロナ対策の観点からも普及を進めている。

 市産業企画課の田中政和課長は市内に店舗がある大手コンビニのローソンでチャージが4月以降可能になったのも大きいと分析。第3弾があるかどうかは未定としつつ「事業を一つの契機とし、キャッシュレスのさらなる普及に努めたい」と述べた。 (錦織拓郎)