東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から15年。福島県では今なお「帰還困難区域」が残り、2万3千人以上が各地で避難を続けている。“復興”のつち音が響く中で長い歳月が流れたが、「原発事故で被害を受け--、避難をした人たちの声があまりにも聞こえてこない」と哲学者の國分功一郎さんは話す。

 追われるように故郷を離れた避難者たちは今、何を思うのか。原子力問題について考え続けてきた國分さんは「この機会にぜひ、話を聞かせてほしい人たち」が暮らす宇都宮市に向かった。3時間に及ぶ対話を経て、國分さんが言う。「原発事故は、人間の想像力が『避難』という言葉に込めてきた意味をはるかに超えている」(共同通信=多比良孝司)

 ▽言葉にならない時、本を手に取った

 2月下旬。JR宇都宮駅を降りると、待ち合わせ場所に「栃木避難者母の会」の大山香さん(60)が迎えに来てくれた。

 「お久しぶりです」。國分さんのあいさつに、大山さんが笑顔で応える。

 交流のきっかけは1冊の本だ。

 福島県富岡町で生まれ育ち、震災時は福島市で暮らしていた大山さんは、悩み抜いた末に「自主避難」を決め、家...