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どうなる木次線・芸備線 シンポジウムが白熱、六角精児さんら、5時間にわたり激論 ローカル線をなくすのは赤字よりも「無関心」<詳報>(Sデジオリジナル記事)

JR芸備線・木次線をテーマにしたシンポジウムが9月23日、広島県庄原市の商業施設、ジョイフルながえであった。鉄道好きで知られる俳優・六角精児さんや鉄道ジャーナリスト、地元住民らパネリスト5人が、両線の魅力や課題、活性化の方策などをテーマに意見を交わした。昼食休憩を含めて約5時間半に及んだシンポジウムの内容を詳報する。 (広島支局・新藤正春)  赤字ローカル線を巡っては10月、事業者と沿線自治体が存廃を話し合う再構築協議会を国が設ける新制度が始まる。JR西日本は同月中に、芸備線の備後庄原(広島県庄原市)-備中神代間(岡山県新見市)の協議会設置を国に要請する意向を示している。接続する木次線へも影響するとみられる。  シンポジウムは芸備線の沿線住民らでつくる市民団体・芸備線魅力創造プロジェクトが企画。会場とオンラインを合わせて約200人の鉄道ファンや地域住民が耳を傾けた。  六角さんのほか、鉄道ジャーナリストの杉山淳一さん、NPO法人ひろしまジン大学の平尾順平代表理事、庄原駅周辺地区まちづくり協議会の西田学会長、ローカル鉄旅ライターのやまもとのりこさんがパネリストとして登壇。鉄道ファンとしての素養を意味する「鉄分」濃度の異なる5人が、多角的な視点から議論した。各パネリストの発言要旨は次の通り。 鉄道ファンや地元住民ら170人が詰めかけた会場は熱気にあふれた  シンポジウムは5人が芸備線・木次線への思いを述べるところから始まった。  ◆六角精児氏 六角精児氏(左)  ー2019年に「お勧めの路線」の一つに芸備線を選んだ。理由は。  「芸備線の良さは、山と川と田んぼ。山と山との間に土地があって、そこに家がひしめき合うようになったりして、川が流れてー。派手ではないが、日本の素直な、素朴な風景が続いているのが芸備線の良さだ。  備中神代から備後落合は本当に山間部を通る。あのあたりは気持ちよく風が抜ける。列車で通ったら本当に気持ちがいいんじゃないかと思う。そこから西城川の脇を流れる区間もいい。山と畑と民家が見える。民家の屋根瓦の端についている模様のようなものを一個一個見るのが好きだ。車窓から眺めると地方色が分かったりするのも面白い。広島から三次に行くに従って、屋根瓦になってくる。感じが違ってくると、広島も奥の方に入ってきたなと旅情が楽しめる」  ー全国津々浦々を旅されている。印象に残る車窓は。  「日本の原風景が詰まっている只見線を応援している。2011年に災害でレールが流されて止まってしまった。復活できたのは、住民の方々の熱意が実は福島県やJR東日本を動かしたからだ。また、長門(山口)より西の山陰線もいい。日本海の美しさをしっかりと見られる」  ー木次線についてはどうか。  「おろち号が無くなってしまうのが残念だ。芸備線に比べてもより山の中を走っている印象。そこを逆手にとって、観光列車化を促進した方がいいと思っている。  三段式スイッチバックは日本にそうあるものではない。肥薩線(熊本・鹿児島)のループとスイッチバックに匹敵するが、ないがしろにされてるという事実にJR西日本は気付くべきだ。 スイッチバックを走る木次線の列車  亀嵩の駅そばも好きだし、まるで神社のような駅舎もある。そういった面白さを、アピールしていくべきだ。  おろち号がなくなるからこそ、観光列車としての木次線を考え直すべきだと思う。成功も失敗もするだろうが、恐れずにやることが大切だ」  ー木次線と芸備線の現状についてどう見ているか。  「非常に厳しい。昨年、芸備線と木次線でで備中神代から宍道に抜けた。芸備線には地元の人が1人しか乗っていなかった。鉄道ファンが青春18切符で大勢乗っていたが、(18切符利用者が)乗客人員に含まれないのは不思議だ。  鉄道についてたくさんの人が考える機会を持つことが必要だ。これは全国的な問題で、高齢者になり、免許を返納しないといけなくなった時に日本の毛細血管である鉄道がなくなっていたらどうなるのか。随分前からちゃんと考えていかねばならない時期に来ていると思う。  バスの運転士も不足している。地方の雰囲気を支えるのはやはり鉄道だ。鉄道について、住民に考えて頂きたいと思う」 ◆杉山淳一氏 杉山淳一氏  「厳しい状態から立ち直った鉄道路線がある。  只見線が走るのは雪深いエリアで、鉄道はトンネルがあるので運行できるが、道路は不通になることが多い。地元から残してほしいという意見があった。  関わる人にすごい人がいる。『只見線を300日撮る男』で知られるカメラマンの星賢孝さん。  四季折々のきれいな写真をSNSにアップし、世界から注目された。特に台湾から訪れる人が多く、地元福島県も、インバウンドの旗になるから残そうと動いた。たとえ満員になっても儲からない区間だが、復旧させた。上下分離で線路は福島県が持つ。JR東日本が支払う線路使用料は、赤字の間は受け取らないとした。 只見線を通る列車  そこまで福島県がお金を出して、血を流して残した路線だ。訪れるインバウンドは東京、大阪、仙台などを経由してやって来る。星さんは、只見線を広い見方で全国に利益のある路線の一つだという。只見線があるおかげで、日本、福島県のインバウンドは相当な利益があるから多少の赤字は構わないという考え方だ。  木次線は、