JR芸備線三次駅周辺の車両=9月24日、広島県三次市
JR芸備線三次駅周辺の車両=9月24日、広島県三次市

 「大量輸送の役割を発揮できていない」-。最近、よく聞かれるこのフレーズがずっと胸に突き刺さっている。地方の鉄道路線の輸送人員や収益を巡るJRの上層部の言いぶりはとても明快だ。数字が示す実態からは反論しづらいだけに、やるせなさが募る。

 JR西日本が岡山、広島両県にまたがる芸備線の一部区間について、地域公共交通活性化再生法に基づく「再構築協議会」設置を国土交通省に申請した。鉄路存続もある話し合いのスタートラインか、はたまた、廃線は避けられないという最後通告か。

 まだ結論は見えないが、5年前の三江線の廃線を経験した地域からシビアに見れば、当然、後者を想定せざるを得ない。結論はまだ先で、詰め将棋に例えると何手詰めかも分からないが、少なくともJR側が放った一手は「急所」と言える。

 存続に向けては、利用者数を増やすか、あるいは脱炭素や物流業界の人手不足の観点から鉄道そのものの役割を再定義するか-。妙案をひねり出す時間は、少しだが残されている。

 再構築協議会の設置は、木次線など山陰両県内に関わる路線でも申請される可能性が高い。だがその前に、せめて各区間でどのくらい輸送人員の増加、収支改善を達成すれば都会地の鉄路と共存できるのか、目標を示してはくれまいか。それが残酷なまでに高いハードルであっても、いきなり最後通告されるよりは、はるかにいい。(万)