「電話の向こう側から動揺が伝わってきた。こちらも頭が真っ白になった」。昨年9月、菅義偉首相に日本学術会議会員への任命を拒否された6人の学者の1人で、憲法学者の小沢隆一・東京慈恵会医科大教授は、当時のショックをこう振り返った。先日、鳥取県弁護士会が米子市内で開いた憲法シンポジウムにオンラインで参加。画面に悔しさをにじませた▼電話をかけてきたのは同会議の事務局長。「明後日の総会には来なくていい」。てっきり決まったと思っていた会員就任を、土壇場でひっくり返された衝撃。連絡してきた事務局長も慌てていた様子だったという▼同会議に対し「カネは出すが、口は出さない」というのが従来の政府の姿勢だったはずだが、菅政権になって「カネを出す以上、口も出す」に変わったようだ。寛容から介入への心変わりに映る▼「学術会議運営には国民の税金を使っている。人選を含めて俯瞰(ふかん)的、総合的に判断する」として、政府は、科学者団体などが求める任命拒否の具体的な理由説明を拒んでいる。その理由は6人の「共通項」から大体想像はできる。安保法制や特定秘密保護法など安倍晋三前政権以来の憲法絡みの問題に批判的な「御意見番6士」を門前払い▼次期首相を事実上決める自民党総裁選が今日投開票される。国民に説明を尽くし太っ腹で自由闊達(かったつ)な新しいリーダー像。ないものねだりだろうか。(前)