いつもより駆け足でやって来た松江城山公園の桜ははや満開間近だが、旅立ちの季節はこれからが本番。進学や就職で古里を離れる若者の中には、新生活に備えて、断捨離を始めた人も多いだろう▼先日、断捨離ならぬ「感謝(かんしゃ)離(り)」という聞き慣れない言葉を、当コラムの愛読者から教わった。大切な物を処分する際に、ありがとうの気持ちを込めることだという▼東京に住む元銀行員の河崎啓一さんが、62年余り連れ添った妻・和子さんに先立たれたのが2年前。さみしさの中、妻の服に「ありがとう」と頭を下げながら整理した経験を、断捨離にひっかけて「感謝離」と名付け、その心境を大手紙に投稿したことが話題に。昨年5月に『感謝離 ずっと一緒に』(双葉社)のタイトルで書籍化されたのに続き、半年後には映画化もされた▼愛着のある遺品を捨てることは、その人とのつながりを断つようでつらいものである。それでも感謝して手放せば、心を整理して少しは前を向いて生きていくことができる。そんな思いが共感を広げているのだろう▼大切な人を亡くしたわけではないものの、巣立ちゆく若者も別れのタイミングに合わせて、感謝離の気持ちを持ってほしい。家族に「ありがとう」の言葉を伝えてはどうか。同時に親の側も、多くの思い出を与えてくれた子どもに感謝して新天地へと送り出したい。旅立ちの春は、感謝離の春でもある。(健)