衆院選の期日前投票を行う有権者。ネット投票が導入されれば出向く手間がなくなる=松江市内
衆院選の期日前投票を行う有権者。ネット投票が導入されれば出向く手間がなくなる=松江市内

 インターネットを使った選挙運動が解禁され、デジタル世代の若者にとって選挙に関心を持つ環境が整ってきたとはいえ、投票率は低い。山陰両県の大学でも見られるように古里を離れて進学する時に住民票を移さないケースが多いのも一因とされる。若者の間にはネット投票を望む声もあるが、実現には課題が多い。 (片山皓平)

 若者の政治参加をテーマに活動する島根大生グループ「ポリレンジャー」の秋本大空さん(19)=1年=は会員制交流サイト(SNS)で選挙情報をチェックする。「政治家が直接、情報発信するので面白い」という。

 SNSを通じた政策の発信などネットでの選挙運動は2013年参院選から解禁され、定着した。16年参院選からは選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられ、秋本さんは有権者の1人として31日投開票の衆院選にも関心を寄せる。

 ところが、各種選挙で若者の投票率はまだ低い。

 17年の衆院選で島根県の18、19歳の投票率は38・50%、20~24歳は36・09%で世代別の最低。全世代平均の60・64%と比べると大きな差がある。鳥取県も同様だ。人生経験の少なさなどさまざまな要因が指摘されるが、一つが大学進学時に住民票を移さずに古里を離れ、現住地では選挙権がなく、帰省しないと投票できないケースが多いことだ。

 本年度の新入生を例に取ると島根大は1201人のうち78・2%、鳥取大は1161人のうち82・1%が県外出身者。鳥取大によると、住民票を移す人は多くなさそうという。

 ポリレンジャー代表の沢田香純さん(21)=3年=は「デジタル化と言われるのに、ネット投票は進まない。投票方法がハードルになっている」と指摘。投票所に足を運ぶ負担がなくなれば、投票を促す一助になるとみる。

 総務省によると、ネット投票はパソコンやスマートフォンを使い、投票先を選ぶ。投票所に行く手間が省けるほか、手書きの投票と比べ、同姓の候補のどちらに入れたか判然としないといった疑問票が生じず、開票作業が速い利点がある。

 課題は三つ。投票データ改ざんなどを防ぐセキュリティー▽パソコンなどが使えない人のため投票所に出向く方法も残す場合、ネットと投票所での二重投票を防ぐ仕組みづくりが難しい▽立会人がおらず、どう不正を防ぐか―。

 総務省は2019年度、東京都や福岡県などでネット投票システムの実証実験を行ったものの、課題解決のめどは立っておらず、現時点では海外に住む有権者の在外投票を対象に導入を目指すにとどまる。

 東北大大学院情報科学研究科の河村和徳准教授(政治学)は、在外投票や、病気などで投票所に行けない人向けの投票として限定的に導入するよう推奨。「信頼感を醸成しながら公平さ、公正さを担保できるよう少しずつ進化させるしかない」と実現への道筋を説く。