中国共産党は重要会議、第19期中央委員会第6回総会(6中総会)を開き、党創建100年の歩みを総括した「歴史決議」を採択した。決議は習近平国家主席(党総書記)の就任以来の業績を賛美し、習氏が格差是正のために掲げた目標「共同富裕」(共に豊かに)の重要性を強調した。
決議は来年後半の第20回党大会で異例の3期目を狙う習氏を毛沢東、〓小平と並ぶ指導者として権威付け、長期政権の維持と安定に向けて習氏の権力基盤を固める政治的な意味を持つ。
しかし、習氏個人崇拝への不満もくすぶる。共同富裕で大手IT・不動産企業や芸能界への締め付けが始まり、文化大革命(1966~76年)のような「政治の左傾化」による大混乱を懸念する声もある。
米国に次ぐ世界第2の経済大国、中国の内政が不安定化すれば影響は世界全体に及ぶ。習氏1強体制下、新疆ウイグル自治区や香港の人権状況がさらに悪化し、米中対立の中で、対外的に強硬化する可能性もある。
国際社会は習政権の動向を注視しながら、中国が1国主義に走らず、各国と協調し、公正な経済貿易制度を持ち、政治の民主化へ向かう「望ましい大国」への道を歩み出すよう粘り強く働き掛けていきたい。
歴史決議は「習近平同志を核心とする党中央」が経済発展や国際的な地位向上などで「歴史的な成果を上げた」とし「中華民族の偉大な復興のため奮闘しなければならない」と強調。香港の統治強化や台湾への圧力を業績とたたえた。
歴史決議は40年ぶりで3回目になる。45年に毛が主導した決議は党創建以来の政治、軍事、思想面の誤りを指摘しながら自らの路線を評価。81年の〓の決議は毛が起こした文革を全面否定しながら、毛については「功績第1、誤り第2」と評価した。
毛、〓、習氏の共通点は自らの権力と共産党独裁を守るため人権を弾圧したことだ。毛は文革で「反革命分子」を排除し、〓は改革・開放を推進しながらも、民主化運動を武力弾圧した89年の天安門事件を「反革命暴乱の鎮圧」と肯定した。
習氏は就任後、全国の人権派弁護士を一斉に拘束、ウイグル族などの少数民族運動を封じ込め、香港への統制を強めて「一国二制度」「高度の自治」を骨抜きにした。
歴史決議のお墨付きを得た習氏への個人崇拝が進めば、仮に毛の文革のように習氏が暴走してもだれも異論を唱えることはできない。
習政権は共同富裕で、IT企業などに寄付による社会への富の還元を求め、住宅価格高騰で利益を上げる不動産業界への規制を強化した。経済成長が減速する中、強引な政治介入は民間の活力低下を招く恐れもある。
歴史決議は2049年の建国100年までに「近代的社会主義強国」を実現する目標を改めて強調し、国防と軍隊の近代化加速を訴えた。
一方、習氏は6中総会の最終日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)でビデオ演説し、環太平洋連携協定(TPP)加盟に向け市場開放に努めると強調。冷戦回帰やイデオロギー対立に反対し、グローバルに発展する運命共同体づくりを呼び掛けて国際協調をアピールした。中国が覇権を追わず、真に運命共同体づくりを実行するよう求めたい。