米子市出身の作詞家で、「旅の宿」「落陽」などで知られる故・岡本おさみさん(1942~2015年)の未発表作「プライベート・ソング2」に、シンガー・ソングライターの南こうせつさんが曲を付け、最新のミニアルバムに収録した。昔の恋人との思い出をつづった詩を、ギター1本でも歌えるフォークソングに仕上げたこうせつさん。来年で生誕80年を迎える岡本さんの詞の世界に「愛の表現が独特」と改めて感じ入った。
岡本さんは、フォークソングの世界を代表する作詞家の一人。森進一さんが歌ってレコード大賞を受けた「襟裳岬」をはじめ、吉田拓郎さんと組んだ名曲が数多く、中には隠岐を題材にした「都万の秋」もある。
こうせつさんとも親交は深く、フォークグループ「かぐや姫」の解散後、ソロで活動するこうせつさんに多くの詞を提供。その数は、拓郎さんに次ぐ。
今回リリースした未発表曲は、こうせつさんが1984年にレコード化した「プライベート・ソング」の別バージョン。当時、二つの詞を提供され、保管していた。
昨年、こうせつさんが自宅の持ち物を整理している際に、岡本さんの原稿の束から詞を久しぶりに目にした。「僕の中にあって、言葉にできないものを岡本さんはえぐってくれる」。詞を読み込むうちに自然とメロディーが浮かび、ギターをつま弾いた。
今年で72歳になるこうせつさんは「年をとるということは不思議。登山中、10メートル上に上がるだけで違った景色が広がるのと同じ」。久々に接した岡本さんの詞から、昔とは違う新たなインスピレーションを得た。
岡本さんの詞に曲を付けることをこうせつさんは「命懸け」と形容する。今回はスライドギターの乾いた音色や弦楽のハーモニーを織り交ぜ、厚みを持たせた。「詞が持っているメロディーを自分の感性で、かっこよく引っ張り上げる。今回はうまくいった」と自信をのぞかせる。
曲はミニアルバム「夜明けの風」に収録。新型コロナウイルス禍での思いを歌った表題曲をはじめ、5曲を盛り込んだ。
(斎藤敦)