<新(あらた)しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事(よごと)>。奈良時代の歌人大伴家持が最後に詠んだ歌といわれ、万葉集に収録されている▼吉事とは文字通り「良い事柄」の意味。当時、新年に降る雪は縁起が良いとされ、雪と同じように吉事がたくさん降りかかって来るように、と願いをかけたとされる▼雪こそ降らないものの、気持ちを一新し、たくさんの吉事を願うのは年度替わりも同じ。桜が舞い散る中、新年度がスタートした。不安や緊張感を抱きながら、入社式に臨む若者も多いだろう▼新聞社でも新たな仲間を迎える。ここ数年、入社式直後の研修で講師役を務めているが、目標の高さに驚かされてきた。「山陰の発展と活性化に少しでも貢献したい」「外国人移住者向けに英語の新聞を作りたい」…。果たして今年の新入社員はどんな目標を語ってくれるのか。いつまでも初心を忘れないでほしい▼新年度に合わせて本紙も、緊迫する米中関係や躍動するアジア情勢を伝える国際面を設けるなどリニューアル。加えて有料会員制の電子版「山陰中央新報デジタル」を創刊した。愛称は「S(エス)デジ」。取材網を生かしたスクープや重大ニュースの速報だけでなく、グルメやイベントなど生活情報、クーポンをはじめとした日常生活に密着した素材も発信する。新たな仲間とともに、新聞と「Sデジ」でたくさんの吉事を伝えていきたい。 (健)