12月2日は原子力時代が始まった日と言える。1942年のこの日、米国シカゴ大学の実験原子炉でウラン核分裂の連鎖反応が継続し、臨界に達した。世界で初めて原子炉の運転に成功したことを意味する▼79年前の第2次世界大戦中のこと。指揮したのは当時既にノーベル賞を受けていた物理学者エンリコ・フェルミ。ファシスト政権下のイタリアから亡命してきた人物で、成功の報は「イタリアの航海者が新大陸に上陸した」という暗号文でワシントンに伝えられた▼原子爆弾を造るため秘密裏に進められたマンハッタン計画の一環だった。ナチス・ドイツの原爆開発を恐れ、ドイツから亡命した科学者を含め数多くの頭脳が協力した。45年5月にドイツが降伏。開発した原爆は広島と長崎に投下された▼戦後は53年にアイゼンハワー米大統領が「平和のための原子力」を提唱し、原子力を発電に使う転機となった。日本は55年に原子力基本法を制定し、63年に茨城県東海村で国内初の原子力発電に成功した▼物質とは何かという根源的な問いを根底に、軍事目的で蓄積が加速した原子力の知識や技術に基づく発電のやり方。電力の安定供給や脱炭素の推進に必要だといわれる一方、「想定外」トラブルで制御不能となった際の恐ろしさや高レベル放射性廃棄物の処分問題がある。将来にわたり平和をもたらすかどうかは意見の分かれるところだろう。(輔)