韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が来年5月に任期を終えるまで残り5カ月余りとなった。過去最悪と言われる日韓関係だが、政権末期を迎えた文氏が打開策を打ち出す気配はない。日本政府も関係改善に消極的だが、相互不信という負のスパイラルにあるのは得策ではない。次期政権を見据えながら、冷静に対話の糸口を模索していくべきだ。

 韓国では11月、金昌龍(キムチャンリョン)・警察庁長官が島根県隠岐の島町の竹島(韓国名・独島(トクト))に上陸し、日本側の強い反発を招いた。現職長官の竹島上陸は12年ぶりで、日本にどのようなインパクトを与えるか、韓国側が熟考した末での判断だったのかは疑問が残る。

 関係者によると、韓国外務省は直前まで計画を知らされておらず、上陸に不快感を示す幹部もいたという。大統領府が主導し、外交当局の意見に耳を傾けなかったことがうかがえるが、日本を重視しないという文氏の姿勢が改めて示されたと見るべきだろう。

 文氏は今年8月、光復節の演説で、日韓関係について「両国が知恵を出し合って困難を共に克服し、隣国らしい協力の模範を示すようになることを期待する」と述べ、日本側に対話を呼び掛けた。また、今年1月にソウル中央地裁が、日本政府に賠償を請求した元従軍慰安婦らの訴えを認める判断を下した際は、記者会見で「困惑している」と述べ、日本に配慮したと受け止められた。

 だが、いずれも原則論や所感を表明しただけで、問題解決のための具体的な提案はなされていない。徴用工裁判では、差し押さえられた日本企業の資産を現金化する手続きが進んでおり、現金化されれば、日韓関係はさらに深刻な状態に落ち込むのは確実だ。

 こうした喫緊の課題を前にしても、文氏は「司法の判断を尊重する」との立場から動かず、国際法違反だとして対処を求める日本側の求めには応じていない。徴用工問題での事実上の対抗措置として、日本政府が半導体素材の韓国への輸出規制を強化、韓国側が強く反発したこともあり、問題の糸は複雑に絡み合ったままでいる。

 来年3月の大統領選には、与党「共に民主党」から李在明(イジェミン)前京畿道(キョンギド)知事、保守系の最大野党「国民の力」からは尹錫悦(ユンソクヨル)前検事総長が公認候補となった。李氏は会見で、徴用工問題の解決には「(日本側の)真摯(しんし)な謝罪」が必要との考えを示し、日本に歩み寄る姿勢は見られない。一方、尹氏は「大統領になれば就任後すぐに韓日関係改善に取り掛かる」と表明しているものの、歴史問題での対日譲歩を警戒する世論は根強く、どこまで実行できるかは未知数だ。

 10月に就任した岸田文雄首相は、徴用工や元慰安婦の問題について、韓国側の責任での解決を求めている。岸田氏は慰安婦問題の最終解決を確認した2015年の政府間合意に外相として携わっており、その後に合意をほごにした文政権への不信感があるとされる。

 一方で、米中対立が深まる中で日米韓の連携は重要性を増しており、日韓の関係悪化は米国にとっての懸念材料だ。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対抗するには日韓の協力が不可欠だ。文氏が日韓関係の改善を業績として残すことは期待できないが、日本には未来志向的な関係構築を図る長期的な戦略が求められている。