大山隠岐国立公園内にあり、休業後40年以上手つかずだった出雲市大社町日御碕の旧宿泊施設「かもめ荘」が解体された。廃屋は異様ないでたちで、県道から美しい日本海を一望できる景観を損ねていた。近隣住民は解体を歓迎し、跡地の有効活用を期待する。
鉄筋コンクリート造り3階建て(延べ床面積約1800平方メートル)で、1970年に建てられた。元従業員などによると、身体障害者がリハビリなどを行う保養所として開業。宿泊施設として一般客も受け入れるようになると、旅行会社を通じて団体客が観光バスで詰め掛け、活況を呈したという。
ところが、徐々に利用客が減り、従業員も辞めていき、70年代後半ごろに休業した。以降、使われることはなく、明かりが消えてにぎわいを失うと「心霊スポット」といううわさが広がり、怖い物見たさの来訪者が増加。落書きも多くされ、不気味な雰囲気を漂わせるようになった。
現在の所有者は雲南市内の建設業者で、請け負った別の現場の費用代償として取得。売却や貸し付けを計画したが希望者がなく、費用面で解体に着手できなかったが、国立公園内の廃屋撤去に国から補助金が出ると知り、申請して今夏、採択された。
9月に解体工事を始め、11月には建物の姿が県道から見えなくなった。工事は今月中に完了するという。建設業者の担当者は「古くなっていてなんとかしないといけないと思っていた。無事に解体できて良かった」と話した。
跡地については賃借の申し出が1件あり、地元企業がキャンプ場などへの活用を検討しているという。日御碕土産品店組合の花房芳政組合長(68)は「心霊スポットと言われたり、落書きがされたり、景観も悪かったので利用されないなら早く撤去してほしかった。活用できるのであれば良い方向に進んでほしい」と望んだ。
(月森かな子)