新潟県糸魚川市の中心部で発生した大火から、きのうで5年が過ぎた。師走の南風にあおられ広がった火は4万平方メートルを焼いた。昨今も絶えない火災に悼むばかりなのがやるせない▼おととし、富山出張の足を延ばして糸魚川を、昨秋は長野県諏訪市を訪れた。ぴんとくる人もいるだろう。出雲を加えた3市は神代に結ばれた縁がある。古事記をひもとけば、出雲大社の祭神・八千矛(やちほこ)(大国主)の神が、高志の国に沼河比売(ぬなかわひめ)という美しい姫がいると聞き、求婚しに出かけた。古事記にある相聞歌は、まれに見る情熱的なラブソングだ▼その沼河比売を祭る奴奈川(ぬながわ)神社が糸魚川にある。すがすがしい気が流れる神社に手を合わせると、子神である建御名方命(たけみなかたのみこと)を祭る諏訪大社へどうしても行きたくなった。各地で伝承は異なり、国譲り神話で諏訪に逃げ去ったとされる建御名方命の真実が分かる気がしたからだ▼3市は糸魚川市長の提案を受け、官民で交流を続ける。ここ2年はコロナ禍が阻むが、3市を巡る市民向けツアーの計画もある。ただの観光とは違って、もう一つの古里を巡るような旅の感がある▼出雲の3市町交流はまだある。出雲そばと香川県琴平町の讃岐うどん、奈良県桜井市の三輪素麺(そうめん)でつながる「三麺交流」だ。金刀比羅宮、大神(おおみわ)神社と、主な神社の祭神が大物主(大国主の別名)という共通点もある。神様が結ぶご縁の地は、旅情を誘う。(衣)