この時期によく聞くクリスマスソングが『あわてんぼうのサンタクロース』。クリスマス前にやって来たサンタが煙突から落ちて、ある家に侵入してしまい、帰っていくまでを<リンリンリン>などの擬音語を多用し、楽しい雰囲気を演出する▼作詞したのは吉岡治さん(1934~2010年)。石川さゆりさんの『天城越え』も手掛けたと知り、面食らった。<誰かに盗(と)られるくらいなら あなたを殺していいですか…>。女性の情念あふれる歌詞とは、あまりに印象が異なるからだ▼経歴を見て得心した。山口で生まれた吉岡さんは2歳で母親を亡くし、父親に連れられ全国の炭鉱町を渡り歩いた。その父も16歳の時に他界。天涯孤独となった吉岡さんは歌に慰められ、童謡詩人のサトウハチローさん(1903~73年)に師事し、童謡『おもちゃのチャチャチャ』などを書き上げた▼31歳で歌謡曲に挑戦し、『命くれない』『大阪しぐれ』などのヒット曲も作った。晩年まで書き続けた”女歌”の世界で亡き母のぬくもりを探し、明るい童謡で幼少の頃に憧れた温かい家庭生活を求めたのかもしれない▼きょうはクリスマスイブ。今年は『あわてんぼうのサンタクロース』発表から半世紀の節目という。新型コロナの新たな変異株拡大など、情念を誘うような暗い話題が多いが、きょうばかりは楽しい歌声で元気に叫びたい。「メリー・クリスマス」。(健)