中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町片句)の再稼働の是非を問う住民投票の実施を求め、条例制定を直接請求した市民団体の代表2人が9日、松江市議会で意見陳述した。原発の事故リスクを不安視する声が根強くあるとして、市民の意見を軽視せず、民意を把握してから審議すべきだと指摘。実施に反対する上定昭仁市長の姿勢を批判した。
(中村成美)
地方自治法に基づいて意見陳述したのは、住民投票に賛同する市民1万1006人分の署名を集めて条例制定を直接請求した「どうする島根原発?みんなで決める松江の会」の秋重幸邦共同代表と岡崎由美子共同代表で、本会議で各15分の持ち時間で思いを訴えた。
秋重氏は2011年3月の福島第1原発事故で原発の安全神話が崩れたことを強調。市民を対象にした再稼働に関する意識調査で賛成と反対が拮抗(きっこう)する結果が出る一方、市議会は原発の活用に肯定的な議員が多数を占めているとして「議会と市民の間に意見の乖離(かいり)がある」と指摘した。
岡崎氏は条例案に付された上定市長の反対意見に対する反論を展開。「市長と市議会が責任ある議論を経て判断する方法が最もふさわしい」とする市長の主張に対し、市長や大半の市議は選挙で再稼働の是非に関する立場を明確に示していないと追及。「市民から再稼働問題の負託も受けたと主張するのは飛躍している」と語気を強めた。
さらに「難題に対して市長や市議会が担うべき意思決定の役割を市民に押しつけることになりかねない」とする市長の認識には「住民を愚民とみなしており、失礼極まりない」と批判。住民投票の結果は市長や市議会の決定を法的に拘束するものではないとして「市民の意向、意思を十分に把握し、結果を尊重した判断をしてほしい」と述べた。
審議中の住民投票条例案は、市内の有権者に2号機の再稼働について、賛成、反対、保留の3択で問うもので、市議会は10日に本会議で上定市長への質疑を実施。休会日を経て、15日に討論、採決する。