ソビエト連邦の崩壊から30年が経過して間もないタイミングで、ロシアのプーチン大統領が、旧ソ連に属していた隣国ウクライナ東部での軍事作戦に踏み切った。バイデン米大統領は「破滅的な戦争を選んだ」と非難。国連も安全保障理事会の緊急会合を開いた▼報道では東部にとどまらず、首都キエフへのミサイル攻撃や空爆もあったと伝わる。全面侵攻にエスカレートすれば、多くの犠牲者が出るのはもちろん今後、「冷戦時代」への逆戻りも懸念される▼旧ソ連の歴史に幕を閉じた、かつての指導者ゴルバチョフ氏はウクライナ情勢について、米ロの対立を念頭に「難しい局面でも対話を中断してはいけない」とインタビューに答えていたが、それはかなわなかった▼既に20年以上ロシアを主導するプーチン氏の念頭に、力を誇示したかつての「大国」の復活があるとすれば、事態はより深刻と言える。憲法を改正したことで2036年まで続投が可能とされるからだ▼陸続きの国境で隣国と接していない日本は、切迫感に乏しく外交術も巧みではないとされる。ただ今回は遠く離れた東欧の事態と見過ごしにできない。「大国」を目指す同様の兆しは、日本の隣国である中国と台湾などの関係にも見受けられる。戦争への道につながりかねない「力による現状変更」に、どうストップをかけるのか。国連や国際社会の「知恵」が問われている。(己)