「平和」という言葉のもろさやはかなさを思い知らされる。ロシアのウクライナ侵攻。ロシアのプーチン大統領はテレビ演説で、ウクライナ東部の親ロシア地域の「平和維持」が目的だと言った▼大統領が具体的にどういう言葉を使ったのか、ロシア語における「平和」の語源やその深い意味を承知していないが、「政治的、宗教的な立場が異なる者との和合」という概念は、どうもないようだ。平和とは望んでも得られない状態-。こう辞書に載ってもおかしくはないくらい、幻想に近い言葉となっている▼恐ろしくてあまり考えたくはないし、あおりたくもないが、同様の出来事が台湾海峡を越える形で起こったら、第3次世界大戦が現実味を帯びるとの識者の指摘がある。米国は中ロを同時に相手にはできないだろう。日本人も「平和ぼけ」と言っていられない▼日本政府は具体的にどう出るか。同盟国と歩調を合わせ、経済制裁をどこまで強化するだろうか。一方で、独自チャンネルによる交渉や対話などの働き掛けはあるのか。ロシアとは北方領土問題を抱える間柄だけに、日本もウクライナ危機における国際社会の主要プレーヤーの一員であることは間違いない▼平和な状態を望んでいるだけではなく、世界は今、平和ではないとの認識の前提に立ち、できるだけ穏やかな状態に積極的に持っていこうとする「和平」の精神と、実践が必要だ。(万)