3月8日は国連が制定した女性の地位向上を目指す「国際女性デー」だった。世界の諸機関が算出するジェンダーギャップ調査で、日本は常に下位に沈んでいる。政治、経済面の不平等が際立つが、自民党などの対応は鈍いと言わざるを得ない。まずは国会、地方議会で確実に女性議員を増やし、政治が変わるとの姿勢を示すべきだ。

 1年前、森喜朗元首相の女性蔑視発言に抗議署名が集まるなど、性差別に反対し、格差解消を求める声が高まった。だが、政治にその機運は生かされていない。

 候補者の男女均等化を政党に求める法律が施行され初めて行われた昨秋の衆院選で、女性候補の割合は2割に届かず、前回の2017年と同水準だった。特に自民、公明両党はいずれも1割を切った。この結果、衆院議員の女性比は1割未満。20年末に閣議決定した男女共同参画基本計画では、国政選挙の女性候補割合を25年までに35%にする目標だが、現状は遠く及ばない。

 女性の地方議員も2割に満たず、女性首長の比率は極めて低い。身近な暮らしを支える意思決定の場が、男性ばかりで運営されているのは極めていびつである。

 世界の約130カ国・地域が、性別を基準に候補者や議席の一定比率を割り当てる「クオータ制」を導入し、効果を上げている。日本も、政党に女性候補者割合の数値目標設定の義務化を求めるなど、同法の強化が必要となろう。

 今夏の参院選に向け、立憲民主党が「女性候補者5割達成」を目指す方針を示した。他党の動向も注視したい。

 政治参画の遅れとともに、日本女性の置かれた地位を象徴するのが、男女の賃金格差である。女性の就業率は米国やユーロ圏を抜き7割を超えているが、女性の5割強がパート・アルバイトなど、不安定で低賃金になりがちな非正規従業員である。このため、女性の平均給与は男性の7割。男女の賃金格差は経済協力開発機構(OECD)諸国の中で最悪レベルだ。

 新型コロナウイルス禍が、この就業構造の問題点を浮き彫りにした。雇用調整を受けやすい非正規の女性たちが職を失い、生活が困窮している。女性の低賃金労働に依存する構造にメスを入れねばならない。

 岸田文雄首相は1月の施政方針演説で、賃金格差是正に向け「企業の開示ルールを見直す」として、企業に対し格差の報告を義務化する方針を示した。これを機に是正へ本腰を入れることを期待したい。

 一方、妻の年収が130万円未満の場合、夫の扶養に入り国民年金と国民健康保険の保険料を払う必要がなくなる「130万円の壁」の問題など、女性の就業拡大を阻む制度の見直しが急務だ。コロナ対策の「特別定額給付金」が世帯主に一括給付され、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者が受け取れない問題も生じた。「世帯主」の考え方は今の時代にそぐわず、各種制度で「給付と負担」を個人単位に変えていく必要がある。

 東証1部上場企業約900社を対象とした大手コンサルティング会社の調査で、女性役員比率と企業業績の相関関係が確かめられた。多様性があれば企業が活性化し、イノベーションが生まれる。日本の成長のためにも格差解消が必要だ。